2011年3月11日金曜日

クロード・ドビュッシー ベルガマスク組曲







ドビュッシーの初期の名曲


 今回も前回に引き続きドビュッシーのピアノ作品について書きたいと思います。「ベルガマスク組曲」もドビュッシーの初期のピアノ作品ですが、この作品も魅力いっぱいです。作品の構成は4つの曲(プレリュード、メヌエット、月の光、パスピエ)から成り立っていますが、それぞれ性格のまったく違う単独の曲を集めて組曲としたものなのです。
 19世紀ロマン派の影響を受けながらも既に自分のスタイルを確立しているドビュッシーの当時のスタイルは非常に親しみやすいのではないでしょうか? ですから、ドビュッシーをこれから聴き始めようという方にとってはこの曲はうってつけかもしれません。

 中でも「月の光」は組曲というよりは単独で演奏されることの多い、誰もが知っている名曲中の名曲です。優雅で癒しを感じさせる曲調と神秘的で無限に情景が広がっていくイメージがとても印象的ですよね!中間部では美しい旋律に郷愁と哀しみが絡み、さらに曲の情緒が深まっていくのです。
 「プレリュード」はドビュッシーにしては珍しく、空一面に虹が掛かったように輝かしくも決然とした出だしで始まります。多彩で陰影に富んだ瑞々しい音のハーモニーは希望と夢の世界が膨らんでいくようで胸がワクワクします!それにしても何という卓抜な感性でしょう!クラシック音楽から重苦しく堅い鉄条網のようなものを取り去った柔軟な音楽性には頭が下がります。
 「メヌエット」、「パスピエ」も夢に見るような美しく可愛らしい主題が連続し、洒落たリズムと共にどこまでも曲を堪能させてくれます。割合に初期の曲(完成には15年の歳月がかかっている)とは言え、どこにも押しつけがましさがなく、余分な力が入っていない自然で透明感あふれる作風はやはりとても魅力的ですね。

 この「ベルガマスク組曲」もモニク・アースが1970年に録音した演奏を推したいと思います。素直な弾き方と飾り気のない透明なアプローチがこの作品にはぴったりで、特別なことはしていませんが気品と愉悦感が音のあちこちから香り立つようです。
 パスカル・ロジェの演奏はとにかく音が美しく、澄んだ清涼な響きは心の栄養となって染み込んでくるようです。あらゆる部分の造形やリズム感も抜群で、ドビュッシーの音楽を安心して聴くことができます。









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2011年3月9日水曜日

クロード・ドビュッシー 2つのアラベスク



詩的なメッセージの素晴らしさ


ドビュッシーはピアノのための作品を数多く残しています。中でも「ベルガマスク組曲」、「亜麻色の髪の乙女」、「版画」、「映像」、「子供の領分」等とても感覚的で情景が湧き上がるような作品ですよね。
ピアノ作品の初期に作られた「アラベスク」も短いですが、なかなかの名曲です。
この曲を聴くととても心が穏やかになります……。きっと多くの皆さんもそのように感じられたことがあるのではないでしょうか。


 「アラベスク1番」はわずか3分足らずの曲ですが、その中に込められている詩的なメッセージの素晴らしさはピアノを弾いたことのある人ならば、誰もが納得することでしょう!おそらく曲を弾く人にも、聴く人にも同じような幸福感を与えてくれるはずです。
ドビュッシーは印象派の作曲家と言われ、音色に色彩的なパレットがあるとも言われています。しかしこの曲では後年のような多様で深い色彩の色調ではなく、さわやかで優しいパステルカラーの音色で統一されているのです。

 アルペジオのリズムを伴奏として流れるように開始される印象的な出だし。空気のように漂い、さわやかに風が舞っている様子であったり、穏やかな水面に照らされる光のイメージであったりと叙情的で美しい旋律が心をとらえます。
 中でも心に刻まれるのは、中間部の静寂で穏やかな光と風に満ちた日常で、ふと物思いにふけるように弾かれる心象風景的な旋律でしょう。これが何ともいえない詩的な美しさを湛えるのです。ドビュッシーの天才的な音楽センスが光った瞬間かもしれません。
 第2番の可憐で洒落たリズムの連続も聴いていてとても楽しく、自在な表情と色彩感とともに次第次第に胸が膨らんでいきます……。

 この曲はフランスの女流ピアニスト、モニク・アースが1970年に録音した演奏を推したいと思います。変に気負わずアラベスクの良さを奥ゆかしい響きの中に歪みなく伝えてくれます。しかも音は極めて上品で繊細、タッチは柔らかく、聴く人はすんなりとドビュッシーの心と結ばれていくでしょう。





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